「シンちゃんはこの森を守ってきたんでしょ?」
「守ってはいないよ。森は僕の力なんか及ばないところで生きている。森があった地球に僕が生まれたんだ。その森の中で生きてるだけだよ。森が無くなったら人は生きてゆけない。だから森が無くならないような生き方をしてるんだ。あたりまえのことだよね」
「シンちゃん、人が森を守れるの?」
「守れないよ。人が森に守ってもらってるんだ」
「でも、森を守ろうって大人は言っているよ」
「そうだね。森を守れると勘違いしている大人が多いんだ。じゃあ森を守るためには何をしたらいいの?」
「木を切らないとか?」
「木を切らないと森はこわれるよ。生活に必要な木を切ることで森も元気でいられるんだ。人と森はずっと一緒に生きてきた。森にダメージを与えて生きてきたんだ。木を切って家を建て、薪や炭、洋服をつくり、山菜やキノコ、カモやシカをとって食べたんだ」
「それって森をこわしてるんじゃないの?」
「やりすぎれば森をこわす。人が増えれば森をこわす。バランスの問題だよ。今の生活は森のものではなく土の中のもの、石油になってしまった。こっちは地球をこわしてるんだ。森のレベルじゃない」
「地球をこわしてるんだ」
「人は地球も守れないよ。神様じゃないんだから。人が地球を作って森を作ったわけじゃない。だからどちらも守れない」
「どうしたらいいの?」
「人はそれぞれの生き方を決めることができる。ただそれだけだ。地球のためでなく、森のためでなく、自分が自分のためにどうやって生きるのかを決めるんだ」
「じゃあどうして地球のため、森のためって大人は言ってるの?」
「弱い人間への誘い文句だよ。自分の生き方が見えていない人にはもってこいの言葉だ。地球のため、森のためと言うのは…。リッちゃんはリッちゃんのための生き方を見つけるんだ。それは時には地球のため、森のためにはならないことをすることもある。でも、無駄な事、余分な事にしなければそこには意味が生まれる。そのためにはリッちゃんの生きる意味を見つけることだね」
「生きる意味?難しそう」
「そう?これは難しく考えたらなかなか見つからないだろうね。でも難しく考えなければ、簡単に見つかることだと思うよ」
「そうなの?」
「今、リッちゃんは何をしたいの?」
「うーん。森を楽しみたい」
「見つかったね」
「シンちゃんは?」
「僕はリッちゃんを守るよ。今はね」
〜森の生活〜
会社を解雇され社宅を出ることになった山中慎一朗に否応もなく始まった釧路湿原鶴居村フォレストハウスでの森の生活。1992年ヘンリー・D・ソローとの出会いから始まった森の生活を振り返ります。
〜森の物語〜
おばあちゃんの森 森のキモチの原点となったお話です。カムイの森 森のキモチからの短編応募作品です。
森のキモチ 林業・森林セラピー・森林インストラクター・アイヌ・環境カウンセラーから学んだ森の物語です。
サード・ステージ 45歳で第3の人生が始まった男の物語。
〜森のセラピー〜
北海道唯一・全国民間初の森林セラピー基地プライベートフォレストのプロデュース。富良野、札幌国際大学、北海道大学、ポー川史跡自然公園などの研究員・アドバイザーとしての中から生まれた山中慎一朗の森での過ごし方です。
〜森づくり革命〜
15年間の森の生活から発見した新しい森づくりの提案です。林業から森林セラピー、森林インストラクター、環境カウンセラー、森林プロデューサーの中から生まれました。
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