〜森の生活〜
会社を解雇され社宅を出ることになった山中慎一朗に否応もなく始まった釧路湿原鶴居村フォレストハウスでの森の生活。1992年ヘンリー・D・ソローとの出会いから始まった森の生活を振り返ります。
〜森の物語〜
おばあちゃんの森 森のキモチの原点となったお話です。カムイの森 森のキモチからの短編応募作品です。
森のキモチ 林業・森林セラピー・森林インストラクター・アイヌ・環境カウンセラーから学んだ森の物語です。
サード・ステージ 45歳で第3の人生が始まった男の物語。
〜森のセラピー〜
北海道唯一・全国民間初の森林セラピー基地プライベートフォレストのプロデュース。富良野、札幌国際大学、北海道大学、ポー川史跡自然公園などの研究員・アドバイザーとしての中から生まれた山中慎一朗の森での過ごし方です。
〜森づくり革命〜
15年間の森の生活から発見した新しい森づくりの提案です。林業から森林セラピー、森林インストラクター、環境カウンセラー、森林プロデューサーの中から生まれました。
2009年7月25日土曜日
森のキモチ「アイヌネギ‐ギョウジャニンニク‐ミドリ」
「シンちゃん、少しずつミドリが増えてるね」
「そうだね。この頃の緑はかたまって出てくるでしょ」
「かたまって?」
「群生と言って、集まって生えてるんだ。ほら、あそこの濃い緑はフッキソウの集まり。明るい緑のニョキニョキと出ているのがバイケイソウだね」
「なんであつまってるの?」
「土の中で根っこがつながっているのが多いからなんだ。根っこがつながっていると、いきなり遠くには出て来れない。少しずつ広がっていくから集まって生えるんだ」
「ネッコがつながってないのはないの?」
「あるよ。そういうのもこの春先は集まって出てくる。冬の間に凍った土が融けて、水が浸り始めるところから緑が出てくるんだ。山は緑の出てくる場所の順番が決まってるんだ。太陽さんが良く当たる沢から始まって、影の笹わらで森の全てが緑になる」
「ふーん。たいようさんと水がミドリの順番を決めてるんだ」
「そうだね。集まって生える種類が多いのも春先の特徴だね。あそこに濃い緑のニョキニョキがある。もう、少し葉っぱが開いてるのもある。ギョウジャニンニクだ」
「アイヌネギだね。採って行こう」
「そうだね。今年の初物のギョウジャニンニクのデビューだ」
「なんでシンちゃんはギョウジャニンニクって呼ぶの?」
「リッちゃんは何でアイヌネギって呼ぶと思う?」
「アイヌの人が食べてたから」
「そうだね。ギョウジャニンニクは、山で修行していた行者が食べてたからそう呼ばれたんだよね。だから僕も平気でアイヌネギって呼んでた。何にもアイヌを悪く言ってないないと思ってたんだ」
「そうでしょ」
「でも、それだけじゃなかったんだ。アイヌネギはアイヌのように臭いからアイヌネギって呼んでる和人もいたんだ」
「アイヌネギは臭いけど、アイヌって臭いの?」
「それは何とも言えない。今のアイヌは臭くないけど、昔のアイヌはわからない。匂いは生まれ持ったものもあるから、和人が違う民族のアイヌを臭いと悪く言うことは考えられるけどね。でもそれは差別につながる。昔は差別が当たり前にされていた。大人から子供まで」
「子どもまで?」
「ネギまで差別されたんだ。アイヌネギって。僕は差別しているつもりはなかったんだけど、差別して呼んでる人もいたと聞くと、やっぱりアイヌネギって呼びにくいよね。でもテレビでも明るくアイヌネギって呼ばれるようにもなってきたようだから、差別の思いは消えてなくなれば良いと思うよ」
「リホはアイヌネギ大すき。」
「僕もアイヌネギが大好きだ。僕は、森と生きたアイヌのためのネギだからアイヌネギと呼んでるんだけど、いちいち説明できないでしょ。面倒くさいからギョウジャニンニク」
「めんどくさい?」
「ごめん。ごめん。これからアイヌネギって呼ぶよ。行者がいなかった北海道でギョウジャニンニクはないよね。やっぱり、アイヌが愛したネギだからアイヌネギだよね。こっちの方が面倒くさくない」
「でしょ」
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