「クマの足あと!」
「ホントだ。もうこっちにも来てるんだね」
「クマって今ごろは何を食べてるの?フキノトウだけじゃおなかすくでしょ」
「そうだね。何があると思う?」
「さかな?」
「魚も捕ってるのかな?でももっと楽に食べられる物があるんだ」
「なに?」
「シカ!冬の間にハンターに撃たれても、逃げ切ったシカがあちこちに死んでるんだ。しばれていたシカがとけ始めて、その匂いを求めてクマはさまよっている。シカの死骸が山のあちこちにあればクマは山にいれるけど、食べ物がなくなったら里へ下りてくる」
「おなかがすいてここまで来たの?」
「ここは山だから、あたりまえに歩いてるよ。クマのお庭に僕たちがお邪魔してるんだ。里と言うのは人が作ってる畑」
「畑までクマが来ちゃうの?」
「そう。おっかないでしょ。昔のハンターはシカのお肉のおいしいところだけ持って帰って後は山に捨ててたんだ。だからクマは春先のエサに困らなかったけど、今は山に捨ててはいけないことになってクマのエサが少なくなった。三年前からクマを罠で捕まえることも禁止になってクマの数は増えている。とても危ない状態になってるんだ」
「たくさんのクマがおなかを減らして歩いてるんだ」
「そういうことになるね」
「なんでそんなことにするの?」
「山にシカを捨てたら山の持ち主が怒る。見た目も悪いし臭い。人の都合だよ。死んだらみんな土に還るのが本当なのに、山のシカさえも土に還れないんだ。もちろん僕もリッちゃんも還れない。土に還れる生き物はこれからどんどん減っていくだろうね」
「クマは?」
「クマの数が増えたらまた罠で獲って数を減らす。その繰り返し。人が生かしたり殺したりして調整してるんだ」
「昔はクマがカムイで、今は人がカムイみたい」
〜森の生活〜
会社を解雇され社宅を出ることになった山中慎一朗に否応もなく始まった釧路湿原鶴居村フォレストハウスでの森の生活。1992年ヘンリー・D・ソローとの出会いから始まった森の生活を振り返ります。
〜森の物語〜
おばあちゃんの森 森のキモチの原点となったお話です。カムイの森 森のキモチからの短編応募作品です。
森のキモチ 林業・森林セラピー・森林インストラクター・アイヌ・環境カウンセラーから学んだ森の物語です。
サード・ステージ 45歳で第3の人生が始まった男の物語。
〜森のセラピー〜
北海道唯一・全国民間初の森林セラピー基地プライベートフォレストのプロデュース。富良野、札幌国際大学、北海道大学、ポー川史跡自然公園などの研究員・アドバイザーとしての中から生まれた山中慎一朗の森での過ごし方です。
〜森づくり革命〜
15年間の森の生活から発見した新しい森づくりの提案です。林業から森林セラピー、森林インストラクター、環境カウンセラー、森林プロデューサーの中から生まれました。
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