森の生活
会社を解雇され社宅を出ることになった山中慎一朗に否応もなく始まった釧路湿原鶴居村フォレストハウスでの森の生活。1992年ヘンリー・D・ソローとの出会いから始まった森の生活を振り返ります。
  〜森の物語〜
おばあちゃんの森 森のキモチの原点となったお話です。
カムイの森 森のキモチからの短編応募作品です。
森のキモチ 林業・森林セラピー・森林インストラクター・アイヌ・環境カウンセラーから学んだ森の物語です。
サード・ステージ 45歳で第3の人生が始まった男の物語。
  〜森のセラピー〜
北海道唯一・全国民間初の森林セラピー基地プライベートフォレストのプロデュース。富良野、札幌国際大学、北海道大学、ポー川史跡自然公園などの研究員・アドバイザーとしての中から生まれた山中慎一朗の森での過ごし方です。
  森づくり革命
15年間の森の生活から発見した新しい森づくりの提案です。林業から森林セラピー、森林インストラクター、環境カウンセラー、森林プロデューサーの中から生まれました。

2009年7月25日土曜日

森のキモチ「夢」


「シンちゃんの夢は?」
「うーん。どうなんだろうね。リッちゃんの夢は?」
「なんだろ。そこがいろいろなんだよね。ユッちゃんの夢は本屋さんだよ」
「そっか。ユッちゃん本が好きなんだ」
「なんでシンちゃん夢がないの?」
「良くわからなくなったんだ。夢を持とうと言ってるけど、ホントにそれが良いのかなって?」
「大人はみんな言ってるよ」
「そこが問題なんだ。この人間界で一番の問題はあたりまえにみんなが言うことなんだよね」
「あたりまえにみんながいうこと?」
「夢を持つということはビジョンを描くということなのかと思うんだ。どんなビジョンなのかは人それぞれなんだと思うけど、そのままの今をビジョンにするのかな?そこが問題なんだ」
「ビジョン?」
「んー。将来の自分の姿をビジョンっていうんだ」
「おとなになって結婚してお母さんになるとか?」
「そうだね。それもあるのかもしれない。でも、それってホントは何にも分かんないんじゃないの?僕もこんなになってるとは思わなかったし、自然環境や社会もこんなになってるとは思わなかった。もちろん夢はあったし、ビジョンもあった。今も持ってる。でも、それはそれ、今を生きてる。夢とかビジョンを持ちながらも今の環境の中でどう生きるのかが一番大事なんだと思うよ。だって将来の環境はわからないから」
「将来の環境?」
「多くの人は、今のままの幸せがいつまでも続くようにと思いながら、次のステップの夢を追ってるんだよね。これはおかしいよ。夢を追うんだったらそれなりのリスクが生まれる。もちろん環境にも。それを意識してるのかな?今のままでと言ってもそれはそれなりの別のリスクがかかってくる。それが自然のバランスだ。今のままの自然環境の中で、いつまでも幸せでいながら夢を抱きビジョンを実現することが、おかしいということに何でみんな気付かないのかな?二兎追うものは一兎も得ずだよね」
「二兎?一兎?」
「二匹のウサギを追ったら一匹のウサギも捕まえられないという意味なんだ」
「なんで?」
「どうやったら二匹のウサギを捕まえられるの?」
「時間をかければ」
「なるほど。それは明解だね。みんなもっと時間をかけてゆっくりと夢を追うことが大事なのかな?今の人は個人と環境という二兎を追ってるから」
「シンちゃんはゆっくりになったの?」
「全然。森に入って少しはゆっくりになるのかなと思ったけど。でも、少しずつゆっくりになってる。やりたいと思うことはどんどん増えている。だから、全然ゆっくりになってないと思ったけど、やってるペースはどんどん遅くなってる。森は凄いね。何かを残すことよりも、次に続くことに導いてくれている。ゆっくりと。それが今、僕が生きるためにすべきことなんだ」
「いま?」
「リッちゃんも夢はどんどん変わってゆく。それは今の環境に生きてるからなんだ。大事なのは夢なんかよりも今何をするかなんだ。今何をしたいかなんだ。夢のために今を生きるんじゃなくて、今は何ができるのか?何をしたいのか?を見つけられることがホントなんだ。友情、冒険、恋愛、結婚、出産、子育て、いつまでもいつでもできるもんじゃない。もちろんしなくてもいいのかもしれないけど、後からしとけばよかったとならないように、今のタイミングで何をするかが、夢よりも大切なのかと思うよ」
「タイミング?」
「そう。今、リッちゃんと一緒に森を歩いてるというタイミング」

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